俺は職場の先輩、ナイスガイ&博識&強面のハルさんと、水道橋駅前の屋台おでん屋で日本酒をあおりながら、味のしみた大根に舌鼓を打っていた。
ハルさんが小用を足しに水道橋駅に消えたその刹那、デカくて黒い二つの影は現れた。
「ミート!ミート!ミート!」
二人は、罪のない慎ましやかなおでん屋のおかみさんに畳みかける。
「ワッツィズディス??」
ちくわぶとつみれを指しながら二人は、何も言えないおかみさんに対して既に攻撃態勢だ。
なぜに黒人が屋台おでん屋に??
…ふと我に返った俺は、既に腐りかけていた英語記憶域にアクセスして助太刀に入った。
「クラッシュドフィッシュ!」 「オクトパース!」 「ジャパニーズホットペッパー!」 「チャップスティックスー!」 「ゼライズノーミート!」
などなどこっちも一杯一杯だ。
しかしまあ、誠意が通じたのか、多少なりとも打ち解けてきたご様子。 「ウェアアーユーフロム?」 なんつって会話開始。
一人は御機嫌斜めの無愛想なのだが、もう一人はとってもフレンドリーな感じで語り出す。 「カメルーンからサッカーを見に来たんだ。ヤツは明日帰るけど、俺は金曜まで日本にいるさ」 なんつって。
そこにトイレから戻ってきたハルさん。俺を通訳にして明日のランチに招待ときた。
「レッツイートランチ!!」 「ジャパニーズフード!!」
なんつって酩酊の中から言葉をひねり出す。 するとまあ、15時なら大丈夫、ということらしく、唐辛子を気が遠くなるくらい入れたおでんスープを飲みながら彼らは帰っていったのだった。
ちゅうか、カメルーン予選落ちだろ? なんで今まで日本に居るんだよ? なんて思いながらも、予想だにしない出会いに異常に盛り上がる二人なのでありました。 |
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