職場が一緒の同い年、口が悪けりゃ手も早い(ウソ)、スペシャルオペレーター川田氏の劇団「有人宇宙船新型アポロ」を観に行った。「全く、入稿前だっていうのに。。。」なんて言いながら。
タイトルは「非線形のハッピィ・エンド」。何やら難解な空気も感じさせつつ、興味津々なタイトルだ。マルチエンディングなのか?それともネジレまくるのか?結末のハッピィ・エンドはいかに?
さてはて、導入。アンダーワールドの曲だったか、サンバチックな曲のリズムに合わせて役者一同がスティックをさばく。ああ、もっと低音が欲しいな、なんて思いつつも、予想外の導入に驚き。でもサイトコ的には引いて見てしまった。
それからはやや緩慢な時間が過ぎる。役者のリズムもやや滑り気味。ドタバタが結構空しく響いてしまう。音とセリフのカブリも気になった。これは前回同様だ。
でも、あるポイントでグッと引きつける。21(22?)世紀の未来の世界のDJが、20世紀の競馬名場面を連続で振り返るシーン。この4回位のリピートが効いた。同じ様なシーンをループさせる手法は、ミニマルミュージックと一緒で、すぐにトランスすることができる。これでサイトコもリラックス。芝居の世界に入り込むことが出来た。
芝居は日常の中に非日常を作り出すもの。ここへの導入がうまくいかないと、芝居の空間は異質なものとして、感性がブロックしてしまい、心の中にまで入っていかないことになる。
昔観た野田秀樹の「野田マップ」では、導入のために、開演前から衣装を身につけた役者がロビーでパントマイムをしていたっけ。あれは結構有効だったように思える。でも、それは飛び道具だからね。やっぱり芝居の中でうまくそのポイントを作ってやらなければならないと思うし、それが成功したら8割方その芝居は成功だとも言えるんじゃないだろうかね。
で、サイトコは入って行けたから、芝居を楽しむことができました。過去のある瞬間と現在の瞬間が、「死」によって結びつけられてる、ってのは納得できた(それは「念」とか「霊」とか言われるのかもしれないけど)。
サイトコは、肉体とは別に、念は世界を自由に行き来してると思うのだ。好きな人や大事な人を強く思い描いた瞬間、その思いは空間を超えてその人の側に行ってるんだろうしね。
一方、音楽には過去の世界の風景とか感覚を、脳みそにパッケージしてしまう力を持ってると思う。視覚でも触覚でもなく、聴覚が記憶と密接にリンクしているっていうのは何だか不思議な感じだけども、実際、音楽を聴くとその音楽を一生懸命聴いていた時の感覚がリアルに蘇ってくる。で、そのシーンを思い出した瞬間、現在の自分(の感覚/念)も、過去のそのシーンに同時に存在している気がするのだ。言うなれば、音楽は、時空を超えて念が行き来する力の「触媒」となっているのではないだろうか。
うーん、訳分からん説明をしてしまったけど、言いたいのは音楽ってやっぱりとてつもなくスゴイんじゃないのか?ってこと。そんなことを思わせてくれるグッドな芝居でした。「死」を明るく、ドライに描いたのもすごく好感が持てました。 |
|